キミがこの手を取ってくれるなら
私の落胆は、周囲から見ても相当なものだったらしく、頻繁に通っていた高校には行くことがなくなり、彼女の存在が気になって、自然と奏ちゃん家へと足が向くことも無くなった。
その頃から、何故かじゅんたが「奏の状況報告な。」と言いながら、勝手に家に上がり込み、私の部屋で過ごすことが多くなっていった。
中学から奏ちゃんと一緒にバスケを始めたじゅんたは、みるみるうちに痩せていき、丸々とした顔立ちはしゅっと細くなり、お肉でふくふくとしていた目は、くっきりとした二重に変わっていた。
元々の人懐こい明るい性格と、ニコッと目を細めて笑う可愛らしい笑顔が、女子達のハートを掴んだらしく、奏ちゃんに負けないくらいにモテるようになっていた。
…けど、じゅんたは大魔王だ。姿は変わっても、元からの性格は変わらない。みんなの前では猫をかぶって可愛らしい笑顔を振り撒きながら、私だけには口の端をにぃっと上げニヤリと笑う意地の悪い笑顔を向け続けたのだった。
私はじゅんたの「状況報告」は、彼の嫌がらせだと判断した。