キミがこの手を取ってくれるなら
私は、側にいても、告白されても、今までじゅんたを男として意識したことはなかったのかもしれない。じゅんたは私のことをずっと女として見ていたのに。
でも、私に触れたいと思ってくれていることに抵抗はなかったし、素直に嬉しいと感じていた。
心を許せるのと同じように身体も素直になればいいだけ…そう思うと、この手に感じているぬくもりをもっと近くに感じたかった。
「いいよ。」
そう言うとすぐに膝に置いた手を引き寄せられてギュッと抱きしめられた。
「奈子、平気?」
「…うん。大丈夫」
震えることもないし、怖くない。じゅんたに抱きしめられたのははじめてだけど、小さい頃から知っているそのぬくもりは心地よかった。
「細いな…壊しそうだ…」
そう言いながらも、抱きしめる腕の力はゆるまず、もっともっとと締め付けてくる。その苦しさまで心地良かった。
じゅんたは、私の身体を抱きしめたまま、いつものように大きな手でゆっくりと何度も頭の後ろを撫でてくれた。
私は、その力強い腕に、優しい手に身を委ねながら、あぁ、今この瞬間に私達は友達じゃなくなったんだな…と感じていた。
じゅんたがとっくに踏み越えていた友達の境界線を、私も今自分の意思で越えた。
近づきたい。もっと。
自分の心に向き合う勇気がほしい。