キミがこの手を取ってくれるなら
4、過去との対峙
2月。
高校の同窓会の知らせが来た。
地元に就職しようと県外に出た同級生たちが戻って来る3月の末に毎年同窓会が開かれていて、就職の年では無くなっても恒例の行事みたいになっていた。
ずっと実家住まいの私の所にも、一応ハガキは届いていた。…毎年破り捨てていたけど。
高校は2年からクラス換えが無かったので、同窓会といったら私を無視したあのメンバーが必然的に集まることになる。だから絶対行きたくなかったのだ。
毎年破り捨てる前に何となく目を通していたハガキには、場所と出欠を確認する印刷の文字の他に見覚えのある、少し癖のある右上がりの字で『待ってるからな』と毎年書いてあったのは知っていた。彼はクラス委員だったから、幹事をしているのかもしれない。
そのメッセージは郷愁を誘うものではなく、いつもの年ならハガキを破り捨てる原因にもなっていたのだけど…
今年も同じメッセージが書かれたそれを何となく破り捨てることができず、ずっとハガキは部屋のテーブルの上に置かれてある。
「行ってみればいいじゃない」
私の少し伸びた後ろ髪をブローしながら、紫ちゃんはあっさりそう言った。
久しぶりに紫ちゃんを訪ねて「marble」へと来た私は、いつもは短いショートに切ってもらう髪を、揃えるだけにしてもらっていた。
10月から伸ばしはじめた髪は、少し長めのショートヘアに変わっていた。じゅんたの部屋に行って抱きしめられたあの日に、自然と『髪を伸ばそう』と思ったのだ。