キミがこの手を取ってくれるなら

「ハガキを捨ててないってことは、行ってもいいやと思えたってことじゃないの?だったらこれはチャンスよ」

とことん向き合ってらっしゃい、と優しく言われる。
紫ちゃんは、私が高校2年で奏ちゃんとじゅんたと離れていた時期でも、私のそばにいてくれた唯一の人だ。私の身に起きたことを知っていて、私が複雑な気持ちでいることも分かっている。行っても気まずい思いをするだけかもしれないけど…向き合ってみるべきなのかもしれない。

「紫ちゃんが一緒のクラスだったらよかったのになぁ」

「何可愛いこと言ってるの。同じ年ならこんなに仲良くなれなかったじゃない。恋のライバルになった時点でアウト!よ」

「なってた時はどう思ってたの?」

「そりゃ、面白くなかったわよ。でもいじめたり、邪険にしたら奏一くんに嫌われるって分かってたからね。周りの子たちもみんなそうだったと思うわよ」

「どうして紫ちゃんとだけは仲良くなれたのかな?」

「奈緒子ちゃんが、可愛かったからよ。奏一くんに振り向いてもらおうって頑張ってるとこが、たまらなく可愛かったわ。告白してさっさと諦めちゃおうと思うくらいにね…違うか。告白した時には、もう奈緒子ちゃんのほうが友達としての存在が大きかったのかも。今思うと区切りをつけたかっただけね」

「私、区切りをつけてないからいつまでもこんな不安なままなのかな?」

「そうかもしれないわね。とことん向き合ってみて、区切りつけてらっしゃい。頑張った子には…そうね、『Milky Way』のケーキが待ってるわよ」

「それなら頑張れるかも!!」


そして、私達は鏡の中で視線を合わせて笑いあった。

家に帰った私は、ハガキの『出席します』に丸をつけた。

とことん向き合ってみようじゃないの。
< 133 / 216 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop