キミがこの手を取ってくれるなら
同窓会当日。
駅前に程近いレストランに足を踏み入れる。
昨日は緊張して眠れなかった。
正午からの開催だったけど、早めに行く気にはとてもなれなくて、気が付くと開始時間をとっくに過ぎてしまっていた。乾杯も終わったらしく、かえって目立ってしまったかもしれない。失敗したなぁ、と思ったけどもう遅かった。
みんなが私をちらちら見ているのも分かったけど、遠巻きにして誰も近寄って来なかった。
やっぱりこうなるか、とため息をついたところで「久しぶり」と後ろから声をかけられた。
私は驚いて振り向いた。絶対、彼女には声をかけてもらえないと思っていたから。
「愛ちゃん…久しぶり」
***
私達は窓際のカウンター席に移動した。
愛ちゃんが口を開く。
「ここ、立食だからさっさと食べないと損だよ。大食いなんでしょ?」
「何で知ってるの?」
「同級生だったらみんな知ってるって。昔と変わらず細いのに、よく食べるよね。あんだけ大食いだって昔は分かんなかった」
「そんなこと言われたら…みんなに見られてると思って緊張して食べられないんだけど」
もう少し、ぎこちない会話になるのかと思っていた。でも二人の間に流れる空気は穏やかだった。