キミがこの手を取ってくれるなら
彼女は市内の病院で看護師として働いていると言った。
同窓会に来て、結構地元に残ったり、戻って来て就職した人が多いことをはじめて知った。
タウン誌の取材で地元を回ることが多い私は、今の会社に勤めた直後は取材の場で偶然同級生に会ったりしないかと警戒していたことを思い出した。
一度も会ったことはなかったけど。
取材では会わないから、人が多くて驚いた、と言うと「大抵看護師か、介護士よ。私達のクラス、理数系の医療コースだったじゃない。」と言われた。
「雑誌社に勤めてるほうが、変よ。」
確かに、病院は取材に行ったことがなかった。
小さい頃は、何となく看護師さんにあこがれていて、奏ちゃんとじゅんたと同じ高校に進学できなかったから、何となくこの高校を選んだ。ただそれだけのことだった。
皆に無視されるようになってからは、特にそっちの道には進みたくなくて、専門学校ではなく、普通の短大に進学した。
短大で『タウン羽浦』の求人を見た時に、タウン誌の記者になれれば、いつか「Milky Way」の取材ができるかもしれない。そんな小さな夢を抱いたせいもある。