キミがこの手を取ってくれるなら
「ずっと謝りたいと思ってたの」と、愛ちゃんが言った。
「私ね、3年に上がる時に三浦くんに告白したの。…だめだったけど。でもね、奈緒子ちゃんとあの時ケンカしてなかったら、あたし三浦くんに想いを伝える勇気を持てなかったって思うの。奈緒子ちゃんに言われたことが、図星で悔しくて…今思うとそれが告白するときの力になったんだよね」
あの時はそこまで思ってなかったけどね、と苦笑いしながら。
あれだけクラスを巻き込んだから、彼女もすぐ仲直りなんて言い出せなかったんだろうな、と思った。まさか、そのままずるずると卒業まで私への無視が続いていくなんて思っていなかったはずだから。
「で、奈緒子ちゃんはどうなの?小山先輩とは付き合えたの?」
急に私のターンになったらしい。
「付き合えなかったよ」
「一度も?」
「うん。一度もない」
「…小山先輩、パティシエになったんだよね?『タウン羽浦』に載ってたでしょ?中学の時はそんな仕事をする感じに見えなかったから、びっくりした。奈緒子ちゃんが取材したカフェ特集も見たよ。今でも仲いいんだよ…ね?」
「見てくれたんだ。ありがとう。今でも奏ちゃんとは仲良しだよ。とっくに失恋したけどね。奏ちゃんね、今働いているお店のオーナーと今年結婚することになったの」
私がそう話すと、愛ちゃんはとても驚いていた。でも、その次の彼女の発言も…ちょっぴり予想していたとは言え、驚いた。
「じゃあ、今は大村先輩と付き合ってるんだね」
…私には奏ちゃんかじゅんたの二沢しかないんでしょうか?
しかも断言されたけど…。