キミがこの手を取ってくれるなら
「つっ、付き合ってないよ。何で?」
動揺して、不自然に言葉を返してしまった。
愛ちゃんは、気にすることなく続けて言った。
「だって、彼氏がいないようには見えないし、大村先輩は奈緒子ちゃんのことがずっと好きだったでしょ?だから、小山先輩と付き合ってないなら、大村先輩と付き合ってるのかな?って」
えー!!何で同級生まで、じゅんたが私のこと好きだって知ってるの?!と思って驚いて愛ちゃんを見ると、
「まさか、気づいて無かったとか言わないよね?!中学から上がって来た子はみんな大村先輩が奈緒子ちゃんのこと好きって知ってるよ!まだ、微妙な関係なわけ?…大村先輩可哀想すぎる」
……図星過ぎて声も出ない。
そんな私の顔を見て、愛ちゃんは心の底からじゅんたを気の毒に、と思っているような表情をしていた。
今度ご飯でも食べにいこうよ、と連絡先を交換して、こうして私達は5年ぶりに和解をした。
***
三浦くんとは何度か目が合ったけど、幹事として忙しそうで声をかけられそうになかった。
終了の時刻も近かったので、私は帰り支度をして席を立った。
帰り際、「奥村!」と私を呼び止める声が聞こえる。三浦くんが走って追いかけて来てくれていた。そして、「来てくれてありがとう」と声をかけられた。
久しぶりに見た彼は、あの頃の優しい笑顔はそのままだけど、ぐっと大人っぽくなって見えた。
「こちらこそ、毎年ハガキありがとう。返事も出さずにごめんね。…メッセージも三浦くんが書いてくれたんだよね?ありがとう」
「俺…奥村のこと、傷つけたってずっと気になってたんだ。俺のせいでクラスからも浮いてたのも分かってたし。でも、あの時は俺も振られてショックだったからさ…どうしても奥村のこと庇ってやれなかった」
「私も…私のほうこそ、三浦くんを傷つけたんだよ。謝らないといけないのは私のほうだよ」
「でもさ、同窓会にも来られなくなったのはやっぱり俺のせいだよな、って思ったら何か書かずにはいられなかったんだ」
「気にしないで。確かにあの時は辛かったけど、おかげで大切なものを取り戻したの。メッセージも嬉しかった。おかげでここに来ることができたから」