キミがこの手を取ってくれるなら
「ほら、ケーキ選びに行こうよ」と紫ちゃんに引っ張られてショーケースの前に来ると、奏ちゃんと志帆さんが笑顔で待っててくれた。
「頑張った奈緒に、パンとケーキ一つずつと、カフェラテは俺たちからのサービスな。
後は……純が困るくらい、いっぱい食べて行ってもいいからな。足りなかったら作ってやる。」そうからかうように奏ちゃんが言った。
……そんなに食べないよ。
でも、気分がいいから、ロールケーキ2本くらいなら、いけるかも。
私は笑顔で「言ったね?全部食べ尽くしちゃうからね!」と答えた。
みんな、私が同窓会に行くことを心配してくれていたらしい。
それは愛されているからだ、って分かっているから、私は今とてもしあわせな気分だ。
今度こそほんとうに大丈夫だと思えた。
過去の記憶は簡単には消せなくて、これからも思いだしたり、飲み込まれて溺れそうになるかもしれないけど…
でも、私は一人じゃない。愛されている。愛を向けてくれる大切な人達がいるから、何度も乗り越えることができる。きっと。
私は過去と自分の気持ちに向き合って、ちゃんと区切りをつけることができたんだ。
あと、区切りをつけることはひとつだけ。
この20年の想いに区切りをつけよう。
片想いの物語を終わらせよう。