キミがこの手を取ってくれるなら

「ほら、ケーキ選びに行こうよ」と紫ちゃんに引っ張られてショーケースの前に来ると、奏ちゃんと志帆さんが笑顔で待っててくれた。


「頑張った奈緒に、パンとケーキ一つずつと、カフェラテは俺たちからのサービスな。
後は……純が困るくらい、いっぱい食べて行ってもいいからな。足りなかったら作ってやる。」そうからかうように奏ちゃんが言った。

……そんなに食べないよ。

でも、気分がいいから、ロールケーキ2本くらいなら、いけるかも。


私は笑顔で「言ったね?全部食べ尽くしちゃうからね!」と答えた。

みんな、私が同窓会に行くことを心配してくれていたらしい。


それは愛されているからだ、って分かっているから、私は今とてもしあわせな気分だ。


今度こそほんとうに大丈夫だと思えた。
過去の記憶は簡単には消せなくて、これからも思いだしたり、飲み込まれて溺れそうになるかもしれないけど…

でも、私は一人じゃない。愛されている。愛を向けてくれる大切な人達がいるから、何度も乗り越えることができる。きっと。


私は過去と自分の気持ちに向き合って、ちゃんと区切りをつけることができたんだ。


あと、区切りをつけることはひとつだけ。


この20年の想いに区切りをつけよう。


片想いの物語を終わらせよう。

< 139 / 216 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop