キミがこの手を取ってくれるなら
今までの20年間がまったく違った思い出に変わり、蘇えっていくのを感じた。
小さい頃は、奏ちゃんに好きになってもらえないならこの世界は終わる、と本気で思っていた。
中学2年生の時、奏ちゃんの彼女を見た瞬間に奏ちゃんの気持ちが離れていったのを感じた。ショックを受けて涙を流しながら帰った道は、遠い昔の思い出のように、セピア色に染まっていた。
じゅんたがいてくれたから、私は辛うじて日々を繋ぐことができたんだ。
思い返すと、小さい頃からじゅんたはずっと私のことを見てくれていた。
鬼ごっこで追いかけ回されたのだって、年上の子達と遊ぶ私が仲間外れにならないようにと気を遣ってくれたのだろうし、いつもじゅんたが一緒にいて私を守ってくれていたから、奏ちゃんを好きな子達からのいじめに逢うこともなかった。
雪合戦でひたすら雪玉を作らされたのは、人よりかなり細身だった私に、雪だまが当たらないようにと考えてくれてたんじゃないかと思う。
何より熱を出した時、意地悪な言葉を言いながらも、時々とても心配そうな目で私を見つめていたことを実は覚えていた。
大切なものを触るように、そっと熱で真っ赤になった頬に触れてくれた手は、大きくて、冷たくて…
とても気持ちがよかった。
全部気がついていた。
……初恋の裏側に隠れていた、もう一つの想いに。
私は、じゅんたにずっと守られていた。
そして、ずっとずっと彼に恋をしていた。