キミがこの手を取ってくれるなら
私の手に、冷たい手の感触が広がる。
この冷たい手のひとは、意地悪だけど誰よりも温かくて、優しい心を持っているひと。
『俺に気持ちを向けてくれるのなら、この手をとってくれよ』
そう言って、私のことをずっと待っててくれたじゅんたに気持ちを言葉で伝えるよりも、まずこの手を取ってそれから気持ちを伝えたかったんだ。
「…どうした?」
何でもないように言うけど、頬が微かに赤くなっているのが分かる。その表情だって愛しいと思う。
私は「私の初恋。終わっちゃったの。叶わなかったの」とだけ言った。
そして「初恋って実らないって、ほんとだね」と言って笑った。
じゅんたはその言葉を聞いて……
「実ったよ」
「…えっ?」
「俺の初恋が今実ったんだよ。…そうだろう?」
そう言ってじゅんたはいつものように、口の端を上げた意地悪な笑いかたをした。
これは照れ隠しだよね。だってまだ頬が赤いもん。私には分かる。
だから、私はあなたにちゃんと伝えるんだ。
「そうだよ。私ね、じゅんたのことが好き。……大好きなの」
真っ直ぐ、じゅんたの目を見て気持ちを伝えた。
それを聞いて、じゅんたは今まで見たことがないくらい嬉しそうな顔をした。
私の言葉で、じゅんたはこんなにしあわせそうになってくれた。こんな嬉しそうな顔を見られる私はもっとしあわせな気持ちなんだよ。
これからは2人でもっと、もっと、しあわせになろうね。
そう思って重ねた手にギュッと力を入れると、その手を引き寄せられて、もっと強い力でギュッと抱きしめられた。
「奈子、好きだよ。大好きだ」
抱きしめあって、お互いの気持ちを確かめあった私達は、新郎新婦よりも一足先にそっとしあわせの誓いのキスを交わした。