キミがこの手を取ってくれるなら
その瞬間、私は少しだけ息を飲んだ。
奏ちゃんと同じく深紅の薔薇のブーケを持った志帆さんのドレスは、マーメイドラインのシンプルなデザインで、細身で背の高い彼女によく似合っていた。
ドレスは首もとから腕までを覆うようにオーガンジーのレースが施されていたが、その透けた生地から見える彼女の右腕は、薔薇と同じように、真っ赤に染まっているように見えた。
陽介さんとともに、志帆さんがゆっくりとバージンロードを進む。
私が歩きたいと思い、夢見たその道を。
そして、彼女は奏ちゃんの元へたどり着いた。
陽介さんが、奏ちゃんに深々と礼をして志帆さんを託す。その時、奏ちゃんが陽介さんに何か言葉をかけたのが見えた。
陽介さんは涙を浮かべながら大きくうなずいていた。
きっと、この三人にしか分かり合えない物語があるのだろう。……そして、それは、私の知ることのない別の物語。
その時、じゅんたが私の手をそっと握ってくれた。
きっと私とじゅんたは、今同じ気持ちを抱いたはずだ。
だって、今までこの三人で同じ物語を歩んできたのだから。
私達三人の話は今日でおしまい。
私は、じゅんたと同じ道を歩いて、彼と一緒に新しい物語を造っていく。
先に『しあわせ』の道を歩み始めた二人の誓いのキスは涙が出るほど綺麗で、まるで、神聖で厳かな儀式のようだった。