キミがこの手を取ってくれるなら
「ねぇ、頑張れって言ってくれないの?私、じゅんたに頑張れって言って欲しい。励ましてよ。お願い!」とパチン、と手を合わせてお願いした。
てっきり、いつもの意地悪な笑顔で「お前には無理だろ。諦めな。」なんてお願いとは反対のことを口にされると思っていた。
しかし、そんな予想とは裏腹に、じゅんたは、眉根を寄せ、一瞬とても辛そうな表情を見せた。
私をじっと見つめ……そして一言だけ
「お前が諦められないって言うんなら……それがお前のほんとの気持ちなんだろ?『頑張れ』なんて言えない。」
と、絞り出すような声で答えた。
「…………」
私は、何も言葉を返せなくなった。
部屋の空気が重苦しい。
沈黙に耐えきれなくなった頃、じゅんたがニヤリといつもの意地悪な笑顔に戻り、こう言った。
「『今こそ、私の出番じゃない?!』って。アハハ。お前、何年出番待ちしてるんだよ?10年以上だよな?一回も出番が回って来たこともないくせになぁ。」
それは、諦めろ、よりも数倍も酷い言葉だった。
「な……っ……っ!」
唇がわなわなと震える。ほんとのことを言われて、反論もできなかった。
「うるさい、うるさい、うるさーーい!
じゅんたのばかぁ!!大嫌い!!」
気がつくと大声で叫んでいた。
やっぱりこいつは天敵だ。恋路をずたずたに邪魔する大魔王なんだ。
魔王に負けてたまるか!自分の物語は、自分で切り開く!!
そして、じゅんたの辛そうな表情と、一瞬だけ感じた違和感は怒りと共に胸の奥にしまいこまれ、取り出されることはなかった。