キミがこの手を取ってくれるなら

そのうち、ふいに昼にここで交わした会話を思い出した。じゅんたは『初恋が叶った』って言ってたけど、いつから私のことが好きだったのかな?と思った。不思議に思って横顔をじっと見上げる。

その時、じゅんたがこっちを向いた。

「どうした?」

…聞いてみようかな。

「あのね、じゅんたは、いつ私のこと好きになってくれたのかな?って思って。」

「……」

しばらく黙ってしまった後で、じゅんたは言いにくそうにこう言った。

「…はじめて会ったとき。」

「えっ?」

「…だから、一目惚れだよ。はじめて会った時に好きになったんだよ。」


一目惚れって…初対面の時に?

お互いケンカみたいな挨拶をしたことしか覚えていない。しかも、私じゅんたのこと、たぬき呼ばわりしたよね?…そんな私のこと好きになったの??信じられない。

びっくりしている私に構うことなく、じゅんたは言葉を続ける。


「一目見て、『お姫様』みたいな女の子だなって思って。可愛いな、って思った。」

「じゅんた、私のことをお姫様って思ってくれたの?!」

「あぁ…お前、ずっと『プリンセス』みたいになりたいって言ってたもんな…そうじゃなくて、姫ってかぐや姫とか、そっちの感じ。」

「北原さんとか、みんなもそっちのイメージで呼んでるんじゃないかな。」


…そうだったのか。入社した時は腰までのストレートの黒髪だった。後ろから見たら『姫』かもしれないな。




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