キミがこの手を取ってくれるなら

じゅんたが私の髪に触れる。

「この長さ、やっぱり似合ってるな。」

「奈子が小5の時、サマーキャンプに『奏ちゃんと行きたい』って言いながら泣きそうになってたのを覚えてるって言っただろ?」


「うん。よく覚えてるな、って思った」


「その時、奈子の口から俺の名前が一言も出て来なくて凄くショックだった。でも、涙をこらえてる奈子のことを見て、綺麗だなって思ったんだ。それまでは好きでも『恋』って感情だったけど、お姫様になって奏の側にいたい、って髪を伸ばして健気に頑張ってる奈子に、俺はあの時、はじめて『女』を感じたんだ。」


「はじめて『俺のものにしたい』、って思った。」


それから、じゅんたは堰を切ったように話はじめた。

「もし、3人出会うタイミングが同じだったらどうなってたかな…」

「考えても仕方のないことだけど、俺も同じタイミングで出会いたかった。同じ所から始めたかった。一年の差は大きかったよ。奈子の隣にはいつも奏がいて、俺はいつまで経っても二人の間には入れなかった。


前に紫ちゃんが3人の間に入れなかったって言ってたけど、じゅんたは、私と奏ちゃんに同じことを思ってたんだ…
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