キミがこの手を取ってくれるなら
2、意地悪で優しい魔王と甘い夜を
ホテルへの帰り道も、私達は手を繋いだままで歩いていた。
ずっと手を握っていても、じゅんたの手の温度は変わらず少し冷たいままで、私ばっかりが火照っているのかと想うと少し恥ずかしい気持ちになった。
……このまま手を繋いでいたいな。
そう思っていても、このままでいると離れがたくなってしまって、もっともっとじゅんたを求めてしまう。
……でも、怖い。
抱きしめられたり、キスをしたりするのは大丈夫だったから、じゅんたとなら…とは思う。
でも、もし駄目だったら?
また、昔押し倒された時の感情がふとしたことでよみがえるかもしれない。
じゅんたを傷つけてしまうかもしれない。
そう思うと、手を繋ぎ続ける勇気が湧いて来なかった。
そのまま、何も言い出せないままホテルに着いてしまった。エレベーターで部屋のある5階まで上がる。私は、堪らずこう口にした。
「ねぇ…手、離して。」
「何で?」
「だって、部屋に戻れないじゃない。」