キミがこの手を取ってくれるなら
じゅんたは私の言葉に一気に不機嫌な様子になった。「手は離さない。このまま俺の部屋に行くか、お前の部屋に行くか、だ」
「え!二沢なの?!冗談でしょ?」
思わず言ってしまってからしまった、と思った。今のはたぶん…かなりの失言だ。
じゅんたは「へぇー」と口の端をクッと上げて笑い、とたんに意地悪な表情になった。
「奈子は、何も分かってないだけかと思ってたけど、分からないふりをすることもできるんだな」
あっ、…この…この笑顔は……まずい。
そのままグイッと手を引かれ、エレベーター横の自販機があるスペースに連れ込まれる。
「じゅ…じゅんた…」戸惑いながら名前を呼ぶ。じゅんたは振り向くと手を離し、肩を掴みながら私の身体を壁に押し付け、噛みつくようなキスをしてきた。
「んっ…っ」
息ができない。苦しくなって重なった唇の間から、酸素を求めるように口を開く。はぁ、と息を洩らすと、その吐息すら飲み込むように頭の後ろを大きな手で支えられて、深く唇を重ねられた。
「はぁ…っ、っ、んっ」
キスをするまでは、じゅんたの手は冷たいから、唇も冷たいんじゃないかと思っていた。
でも全然違った。
唇も…唇を割って私の中に入りこんでくる舌も……驚くほど熱くて、私は熱に浮かされるようにじゅんたからのキスに翻弄されてしまう。