キミがこの手を取ってくれるなら
ベッドへと下ろされる。
じゅんたがネクタイを緩めながら近づいて来た。そのまま、しばらく私の頬に手を置いてじゅんたは私に言った。
「奈子、大丈夫か?」
「え?」
「怖くないか?」
真剣なその表情を見て、あぁ、そういうことかと思った。
私が過去を思い出さないか心配してくれてるんだ。
さっきまであんなに不安だったのに、じゅんたの部屋に入ってからはそんな過去の記憶は思い出しもしていなかった。……嬉しくて。
「大丈夫だよ。…続けて。」
最後は恥ずかしくて小声になってしまった。
「了解。…なぁ、これどうやって取るんだ?」
髪の毛を撫で、編み込みにセットした場所に手をやりながらじゅんたが聞いてきた。
「え、これ?けっこう取るの大変だと思うよ。髪の毛作ったとこ、じゅんた見てたじゃない」
「ヤダ。取る。髪の毛撫でながら…したい」
子どものように言うから思わず笑ってしまった。おかげで、ちょっとだけ残っていた緊張感が、吹き飛んだような気がした。
「手伝ってね」クスクス笑いながら、じゅんたに背中を向け、私も髪の毛に手をやりながら髪の毛を固定しているピンやゴムを外していく。
「女って大変なんだな。しかし、何本刺さってんだよ、これ。……紫に邪魔されてるみたいだな」
言いがかりみたいな一言に思わず苦笑いを浮かべる。紫ちゃんだって、じゅんたが私のセットを外してるなんて思ってもいないはずだ。
全て外し終ると、髪の毛を手で解しながら、じゅんたは「ずっとこうしたかったんだよな。」と嬉しそうな声で言った。