キミがこの手を取ってくれるなら
意地悪な彼のほんとの気持ち ー 純 side ー
1、溺れていく
ある晴れた日曜日。
どこかに出掛けることもなく、見逃してしまった映画がDVDになったから見よう!と昼近くにいきなり俺の部屋に現れた彼女は、ソファーでくつろぎながら、勝手にDVDを見始めた。
確かに、見たかったよなーと会話した覚えはあった。でも、久しぶりに会ったのに映画はないだろ…俺はちょっと不機嫌な表情で彼女を見る。そんな俺の視線に全く気づく様子もなく、彼女は夢中でテレビを見ている。
俺、大村 純が、幼なじみだった 奥村 奈緒子と付き合いはじめて3ヵ月が経った。でも幼なじみとしての年月はもう20年になろうとしているから、恋人として過ごすって言うよりは仲の良い友人、みたいな雰囲気にすぐなってしまうんだろう。
正直に言って、ものすごく不満だ。恋人になってまで『幼なじみ』なんて、何だよそれ。
「はぁ、面白かったー」すっかり満足した彼女はソファーの上で手足を伸ばして伸びをした。
……俺は全然面白くないけどな。
ソファーの下に座っている俺の目には、さっきからスカートの中の脚がチラチラと見えてるんだぞ。たまんねぇよ。
俺は身体から沸き起こる欲求に逆らわず、素直に行動してみることにした。
口の端をちょっと上げてニヤッと笑ってみせると、ソファーに腰掛け、近づいてわざと耳元で囁くように話かけた。
「なぁ、奈子。俺も、『したい』ことがあるんだけどなぁ…」