キミがこの手を取ってくれるなら
奈子はパチン!と手を合わせながら、「私、じゅんたに頑張れって言って欲しい。励ましてよ。お願い!」と言って来た。
傷口に塩、どころか傷口を目一杯広げられてから、ぐりぐりと塩を入れられた気分だった。
奈子にとっての俺の存在って……
ずっと友達だったのか?
それともずっと利用されてただけか?
落胆が身体中を包む。
『頑張れ』なんて言える訳がない。
軽口を叩いて、何とかその場はごまかしたけど、心はズタズタだった。
奏が奈子の側から離れたって、俺はいつまで経っても奈子の物語の中には入れなかった。
高校3年の冬、一度も想いを伝えられないまま、俺は奈子のことを諦めた。