キミがこの手を取ってくれるなら
3、黒い女と真っ黒な男
大学一年の夏、駅前に程近いカフェテリアの中、俺はある女とにらみ合いをしていた。
呼び出された理由は分かっていた。
「純くん、何考えてんの?最近の純くん、何かおかしいよ?」
「うるせーな。お前に関係ないだろ。」
「あるわよ。…香織のこと、あんなに傷つけといて、よく関係ないって言えるわね」
「……」
そう言われると言葉が出ない。
俺の向かいに座っている女は葉山 紫。小学校からの同級生だ。
俺は彼女の友達で高校の同級生だった崎山 香織と付き合って……先日別れた。
それが、ここに呼び出された理由だった。ろくに話もしないで、ただ別れ話を切り出した俺に絶対紫は怒るだろうな、となんとなく予想もついていた。
紫は、みんな遠巻きにして入って来なかった俺たち3人に近づいてきた唯一の存在だ。
まぁ、最初のきっかけは奏目当てだったらしいけど。
「奏一くんにも、会ってないでしょ?奏一くん、この近くのパン屋さんでバイトしてるのよ。」
……そんな情報いらねぇよ。
「相変わらず、奏と『なかよし』なんだな。」
と、言葉に少し嫌味を混ぜてみる。
「ええ。私純くんとも『なかよし』だと思ってたんだけど、違った?彼女をとっかえひっかえするような男だとは思ってなかったんだけどなぁー。」
「ま、失恋の傷は深いみたいだから、手当たり次第に癒そうとしたんでしょ?どうせ。」
ちょっと言った嫌味が何倍にもなって返ってくる。こいつは、こういう女だ。
黙ってればなかなか美人なのに、こいつは、黒い。