キミがこの手を取ってくれるなら
「みんな『なかよく』したいくせに、わざとバラバラの方を向いてるなんて、理解できないわ。」
「……どういう意味だよ。」
「奈緒子ちゃん、彼氏できたみたいよ。」
「えっ…」
俺は死ぬほど驚いた。
「何だよ、それ。」
驚きが口をついて出た。
俺がいなくなったら奏のとこに行くもんだと思ってたのに。「頑張る」んじゃなかったのかよ。
「ねぇ、純くん。」
紫が続けて言った。
「奈緒子ちゃんは気づかないだけで、奈緒子ちゃんにとっても純くんの存在って大きかったのよ?…ほんとにバカよねー。3人ともね。」
「……気づかない、ってとこがいちばんキツかったんだよな。」
そう言いながらも、紫の言葉に喜んでしまった自分がいた。
本当だろうか?奈子にとって俺はどうでもいい存在じゃなかったんだろうか?
「紫、教えてくれてありがとう。……香織とのことは、悪かったと思ってる。ちゃんと話すよ。」
素直に言葉が出たことにも驚いた。
そして、『彼氏ができた』と聞いたにも関わらず、奈子にまた向き合いたいと思ってしまった自分自分にも。
「分かればよろしい。やっぱり、純くん『は』素直でいいヤツだわ。」
紫は満面の笑みでうなずいた。
素直でない男にも向き合え、ということだろう。俺はこの女にいいようにコントロールされているような気が…する。