キミがこの手を取ってくれるなら
高校2年の秋のあの日、私はとてもむしゃくしゃしていた。
友達とケンカをしたのだ。
何がきっかけかは、もう細かくは思い出せない。金曜日の放課後といういちばん楽しい時間に私は友達につかまり、聞きたくもない恋愛相談に付き合わされていた。
大体、女子の恋愛相談というのは「相談」とは名ばかりで、その9割は「ただ話を聞いてほしい」という愚痴のみで構成されている。相談している時点で、ほぼ答えは出ているのだ。
なので、後は1割程度のアドバイスで彼女の気持ちを満たしてやれば良かったのに、延々と続く愚痴めいた話に我慢できなくなり、彼女が望んでいない範囲までついつい踏み込んでしまったらしい。
そんな地雷を踏んだ私に、彼女も負けじと私の地雷を踏んだ。
「何よ偉そうに。自分なんてずっと小山先輩に相手にもされてないのに、ばかみたい」
私はその一言にキレた。
じゃあ、相手にもされてないやつに恋愛の相談を求める方が間違ってるんじゃないのだろうか。
あぁ、思い出した。彼女の名前。愛ちゃんだ。。そして、愛ちゃんのそのセリフはかなりタイミングが悪かった。
実際大学生になった奏ちゃんから、私はすっかり相手にされなくなっていたからだ。