キミがこの手を取ってくれるなら
こんな熱を出したのはいつ以来だろう。
身体が言うことを利かない。
ふと目を開けたら、誰かが様子をうかがっているような気がした。
「まだ……いたのか?香織。……もう帰って。」
放っといてくれ。俺のことなんか。
お前の好きなヤツは、こんなに情けない男だ。
結局、香織は日曜日も一日中側にいた。
病院には起き上がるよりも横になっていたほうがまだ楽だったので、とてもじゃないが、行けなかった。
あっという間に月曜日になってしまったらしい。「学校には話しておくから。」そう言ってようやく香織は帰ったけど、放課後になったらまた来るんだろうな。きっと。
……だるい。全てが。何も考えたくない。
***
夕方、チャイムが鳴った。
……来たか。
気づかないふりをしようかと一瞬思ったけど、そうしたらどんな手を使ってでも鍵を開けられそうな気がした。
重い身体を引きずるようにして玄関へと向かう。鍵を開けるとすぐに扉は開いた。
そこに立っていたのは……奏だった。
「どうして……ここに?」
俺の言葉を無視して奏は話した。
「これじゃ、無理だよな。」
は?何言ってんだ?
「まず、着替えろ。病院行くぞ。で、しばらく実家行け。どうせ連絡入れてないんだろ?」