キミがこの手を取ってくれるなら
着替えながら何となく思ったことを聞いてみる。
「なぁ、奏。奈子が……来たのか?」
アパートに来たのかもしれない。
……でなければ、奏がここにいる理由が説明がつかなかった。
だけど、俺の言葉に、また奏は何も言わなかった。
「全く、お前たちはほんとに世話が焼けるな。まず、身体を治せ。そんな頭じゃ、どうせまともに考えられないだろ。」
確かにまともに考えられなかった。目の前がぐるぐると回る。自分が情けなかった。
結局病院では風邪と過労と診断され、まともに飲み食いしてなかったので、点滴を受けた。
奏は病院も付き添ってくれ、実家へ連絡まで入れてくれた。
***
そのまま世間はGWに突入した。
だいぶ調子は良くなったが、まだだるさが続いて起き上がることができなかった。
香織から何かしら連絡が入ると思って構えていたが、何もなく、学年主任から連絡があっただけだった。たぶん、奏が何か言ったんじゃないか?何となくそんな気がした。
そんな連休2日目。奏が来た。
「純、調子はどうだ?」
「だいぶいいよ。悪かったな、いろいろと。」
「実家だと動かなくていいからラクだろ?余計なヤツも来ないしな。」
そう言って奏はニヤリと笑った。
……絶対、こいつ何かしたな。
「ああ、そうだな。正直参ってたから、助かった。」
そう口にしたけど、奏の表情は少し曇っていた。