キミがこの手を取ってくれるなら
何も知らない自分が情けなかった。
奏は奈子から聞いた話を教えてくれた。
奈子は、香織の言葉に傷つけられはしたけど、たぶん言い返すことはせずにそのまま受け止めてしまったんだろう。
俺のことを好きなヤツの言葉に言い返すことをしなかった。これって、俺を好きじゃないってことじゃないかよ。……参ったな。
気づいてしまった真実は、とても辛いものだった。
でも、少なくとも奈子を傷つけたのは俺だ。
はっきり香織のことを拒絶できなかった俺のせいだ。
そんな俺の気持ちを見透かすように奏が笑いながら言った。
「お前、はじめて本音出しただろ?気づかない訳ないんだよ。俺だって、お前と長い付き合いなんだから。俺が奈緒と寄り添うことは、もう二度とないんだよ。後はお前の気持ち次第だって、まだ分かんないのか?」
「お前は、いつも言葉が足りないんだよ。面倒だと思うと口をつぐむ。伝わるもんだと思ってる。違うだろ?もっと向き合って、ちゃんとお互い話をしてみろ。」
「……もう伝えたって大丈夫だ。奈緒も、内心ではそれを望んでる。奈緒は原因は分からないけど、一人になることを恐れてるんだ。奈緒を救ってやれるのは、お前だけだよ。」