キミがこの手を取ってくれるなら

「好き勝手なこと言いやがって。」

思わず口をついて出た。
俺がどれだけお前に嫉妬してきたと思ってるんだ。

やっぱりお前には、敵わないんだよ。

「なぁ、奏。俺が……お前らとおんなじタイミングで出会ってたらどうなってたかな?……出会いたかったんだよ。俺はいつも3人じゃなくて、2人と1人だ、って思ってたから。」


今まで言ったことがなかったこの言葉も、今なら言っていいような気がした。


奏は笑いながら言った。
「考えたくもないな。しかも、俺と奈緒だけじゃきっとダメになってたよ。純がいてくれたから、ここまで『幼なじみ』として過ごせてる。」


今までのわだかまりや複雑な感情が急に解けて(ほどけて)真っ直ぐな想いに変わっていくようだった。


俺は、ようやく奈子と向き合う覚悟ができたんだ。そう思った。



***

奏に失恋した今の奈子の気持ちはどこに向かっているかは分からないけど、最後には俺の手を取って欲しいんだ。


だから伝える。俺のことを考えて欲しいから。そして、少しずつ、気持ちを向けてくれ。



俺は奈子のことが、好きだ。ずっと好きだった。


……俺は、ようやく長年の想いを奈子に伝えることができた。




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