キミがこの手を取ってくれるなら

地元の大学に進学した奏ちゃんはじゅんたとは違い、実家を出て一人暮らしをはじめた。


奏ちゃんが、そばにいなくなってしまった。


卒業と同時に彼女と別れてから、大切な人ができることも、好きな人がいる気配もなかったけど、元カノと付き合ってた時に引かれてしまった線は、いくら経っても消える気配がなかった。実家にも月に一度帰ってくればいいほうで、顔を合わせても、話しかけても、何となくよそよそしくなってしまう。


今まで当たり前のように目にしていた存在は遠くなり、あんなに密だった私達の時間はどこかにいってしまっていた。


彼女と別れた時には、あんなに奮起して頑張るぞ!と意気込んでいた私の気持ちはみるみる小さくなっていき、夏が終わる頃にはすっかりしぼんでしまっていた。


奏ちゃんと大学が別れたことでじゅんたも私に「報告」をする事がないので、すっかり家に来ることもなくなってしまった。


ひどい喪失感だった。

私は、二人とも遠い存在になってしまったのかと、とても悲しい気持ちで日々を過ごしていた。

ケンカは、そんな矢先の出来事だったのだ。
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