キミがこの手を取ってくれるなら

6、想う、ということ。


守りたい、最初はそう思ってた。

いろんな過去の出来事に囚われて、押し潰されそうになっている奈子のことを。

だけど彼女は一つ一つの過去にゆっくりだけど向き合った。


時々泣き顔は見せてくれるようになって、心を許してくれているのかと思うと、愛しさが募った。

そんな彼女の強さに、いつも眩しいくらいの想いを抱いていた。


過去に向き合う度に、奈子との距離が近づいていくような気がした。


そして、奏への想いにちゃんと区切りをつけて、俺に向き合ってくれようと、準備をしていることもちゃんと分かった。


そっか、こんな簡単な事だったんだ。
想いを伝えるってことは。


時間はかかったけど、俺も「側にいる」「寄り添う」ことのほんとの意味を知ったんだ。

***

奏の式の前日。

『臨時休業』の札がかかった「Milky Way」の店内に、俺は呼び出されていた。

カウンターの中には志帆さんと陽介さん。
横には北原さんと紫。

完全に囲まれている。


……何だよ、これ。
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