キミがこの手を取ってくれるなら
「これで、ようやくあなた達もうまくいくのかしらね。じれったいったら、なかったわ」
そう言ったのは紫だ。
「ところで……奏は?」
「実家に戻ったわ。久しぶりにゆっくり家族で過ごしたいでしょうからね。」
と言ったのは志帆さん。
「ここの『家族』は水入らずで話すことないんですか?」と言ってみたけど、
「だって、こっちのほうが面白いからね。」とあっさり陽介さんに返された。
「で、姫はちゃんと今日で区切りをつける訳か。頑固だよな。ほんと。こんなにいい男を待たせてなぁ。」
としみじみ言ったのは北原さんで……
……奏への想いに区切りをつけようとしている、奈子の気持ちはみんな分かっているらしかった。
どうやら、俺の……いや、俺たちの恋はいろんな人たちに心配をされていたらしい。
恥ずかしさに多少いたたまれない気持ちになりながらも、こうして見守っていてくれた人たちがいたことも嬉しく思った。
奏や奈子の他に心を許せる人たちがいたということにも。
そして、俺はこの人にも心配をされていたらしい。
奈子のお母さんにも。