キミがこの手を取ってくれるなら
式当日の朝。
少し約束よりも早めの時間に現れた俺に、奈子のお母さんはこう言ってくれた。
「今まで奈緒子のこと見守ってくれてありがとう。支えてくれてありがとう。奈緒子だって、きっと分かってるわ。」
何回か奈子のことを家に送った時に、心配しないでください、大丈夫です。と伝えたことがあった。
おそらく、俺以上に彼女のことを心配していたと思うから、おばさんにそう言われて嬉しかった。
それに、おばさんだって俺の奈子への気持ちを聞いてから、俺のことも一緒にずっと見守ってくれていたのに違いないだろうから。
しかし、次の言葉を聞いた瞬間俺は固まった。
「だからね……純くん。もう奈緒子に手を出しても怒らないわよ。」
「は?!」
驚いた後、意味を理解して動揺した。
何てことを言うんだよ、この人は!!
そんな俺の様子を楽しげに眺めつつ、
「そろそろ奈緒子のこと起こすから、真っ赤になってる顔、何とかしなさいね。」とおばさんは言った……。
奈子の小悪魔は、絶対この人の遺伝だ……。
だけど奈子は天然で、おばさんは熟知してる。絶対こっちのほうがたちが悪いだろ。
俺は二人に振り回されることに……なるのかもしれない。
でも、そんな未来もしあわせかもしれない。
きっとキミは長かった想いに区切りを付けて、目を腫らして起きてくるはず。
そして、こんな朝早くからいるはずのない俺の姿を見て慌てるはずで……
そんなキミの慌てる姿を想像するだけで、俺は嬉しい気持ちになってしまうんだ。