キミがこの手を取ってくれるなら

そんな奈子になら、俺の心のずるい部分や弱い心をさらけ出してもいい気がした。

受け入れて欲しかったわけじゃなくて、ただ伝えたかったんだ。

俺に気持ちを向けてくれた奈子だけに。


しかし、やっぱり奈子は俺の想像の遥か上を行く女だった。


奈子は俺の気持ちをあっさり受け入れてくれただけでなく、これからは分かち合いたいと言ってくれたんだ。


心を許せる人は多くないけどいる。
でも、分かち合いたいのはあなただけ。
奈子はそう言ってくれた。


俺がその瞬間、どれだけ嬉しかったか分からないだろう?


ずっと一人だと思っていたのに、側にいて、寄り添って、分かち合いたいと言ってくれる人がいた。しかも長年想い続けていた愛しい人に、そう言ってもらえたんだ。


あの時、俺はみっともなく奈子にすがって泣いてしまいそうになったんだけど、それだけはなんとか堪えた。


プライドだけは…なんとか保っていたいだろ。


散々、みっともないとこを見せてきた君だけには特に。
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