キミがこの手を取ってくれるなら
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青いカーテンが揺れている。
お互いの体温が上がって、火照ったのを冷やそうと開けた窓から、秋の涼しい風が入り込んできた。
眠っている奈子の横顔にそっとキスをする。
彼女は、この季節が嫌い、と言っていた。
高校生の頃にクラスの全員から無視されて、友達がいなくなり、一人になる不安に苛まれたかららしい。
その時ケンカをした友達とは、同窓会をきっかけにまた仲良くなれたようだったけど、今になってもその時の一人になる不安な気持ちはなかなか消えないようだ。
勤め先も10月に入ると忙しくなることを理由にして、限界まで仕事を詰め込む。考える暇を自分に与えないくらいに。
だから、こうして顔を見るのは久しぶりだった。
そんな忙しい合間をぬって、わざわざ自分に会いに来てくれたのは分かってた。
なのに…疲れさせちゃったよなー。と、ちょっと後悔する。
「う…うーん。」奈子が薄く目を開けた。
こっちをうかがうように見て、俺が見つめていることに気づくと照れたように笑う。
こうして何度も肌を重ねたのに、この瞬間は初めての時のような反応で、いつも可愛らしく思えてしまう。
ずっと、ずっとこうして側にいてほしい。
側で笑っていてほしい。
不安なんて感じないくらいに。