キミがこの手を取ってくれるなら
来月のメイン特集は「カフェ」。企画部員は各コンビに別れて取材を行う。
「そういえば北原さん。どうして喜べ、って言ったんですか?」
カフェ好きだと言った覚えも無ければ一緒に行った事もない。不思議に思いながら聞いてみると、「だってお前食い物がらみの取材だと気合いが違うだろ。」と笑われた。
とたんに苦い記憶が蘇る。
それははじめて研修を終え、取材に同行した日。その月の特集は「GW、巨大フードを食べ尽くす!」で、編集部員が身体を張って体験するというものだった。私達は北原さんの運転する車で山道を上り、大食いさんには有名な「みなせ」という定食屋さんに行った。こんな山奥に店があるなんて、と驚いていた私だったが、車を停める場所に困るほど賑わっていることにも驚いた。
しかし、私は1時間後その店内中の人たちをもっと驚かせることになる。北原さんが3分の2でギブアップした、通称「エベレスト」と呼ばれるみなせ名物の山盛り鳥唐揚げ丼を完食したのだ。
編集部で唯一、巨大フードを完食した私の雄姿は誌面で大きく取り上げられた。うっかりしてしまったこととは言え、穴があったら入りたい気持ちだった…
恥ずかしかったので、雑誌に載ったことは隠していたけど、すぐにみんなにばれた。
じゅんたは、わざわざ雑誌片手に家までやってきて「デビューおめでとう『大食い姫』」なんて言ってからかってきた…