キミがこの手を取ってくれるなら
一度こう、と決めたら突っ走ってしまう性格の私の、恋心を自覚した後の行動力は凄かった。
あまりストーカーという言葉は聞かなかった時だったけど、ストーカーも真っ青なかなり大胆なアプローチだっただろう。
朝の「そうちゃん、おはよう。だいすき!」の挨拶&ハグからはじまり、幼稚園バスではがっちり隣を確保。
先生に連れ戻されながらも、毎日奏ちゃんの組に顔を出し、奏ちゃんを狙う女の子がいないかと、目を光らせた。
奏ちゃんは年長さんだけでなく、年中、年少の子たちにもモテモテだったので、多少強引でないと勝てなかったし、モテモテの王子様の隣に座るお姫様になるには、他のお姫様さまのように、待ってるだけではだめだったのだ。
そう。行動力が、必要なのだ。
この恋の物語の主役になるのは、奏ちゃんと私。そう信じて疑ってなかった。
…正直、今思うとよく嫌われなかったもんだと思う。
お向かいさんの特権か、奏ちゃんのお母さんにも気に入られ、奏ちゃん自身もおおらかな性格だったので嫌がられることもなく、仲良くしてもらったし、可愛がってもらった。
私は毎日がしあわせだった。あの時期が私の23年の人生のピークだったんじゃないかと、今でも思う。
そして、奏ちゃんが一年生になって半月ほど立った頃、私の恋路を邪魔する魔王が現れた。
…物語は、ハッピーエンドだけとは限らないことをこれから私は身を持って知ることになる。