キミがこの手を取ってくれるなら

話終わると北原さんが「でも、不思議なんだよなぁ。」と言った。

「何がですか?」

「婚約がショックだったら、予感していたとは言え、あの場でもっと動揺してるはずだろ。あんな笑顔でお祝いしておいて、次の日にはこの状態、ってちょっとおかしいだろ?俺は何か他の原因があるんじゃないかと睨んでるんだけどなー。」

…北原さんはするどい。

少なくとも、目の下にクマができたのは奏ちゃんのせいじゃなくて、一晩中じゅんたのことを考えて眠れなかったからだ。

「けっこうするどいですね。」

「だろ?記者なめんなよ。相方にこんな顔で仕事させられないしな。ほら、話してみ?」

記者なめんなよ、って…タウン誌の記者なのに…と思いながらも、『相方』として心配してくれた気持ちが嬉しくて、今まで誰にも言ったことの無かった私達3人のことと、じゅんたのことも話しはじめた。


すべて話終わると、北原さんが「しかし、姫のもう一人の幼なじみ…じゅんくんだっけ?優しいヤツだなー。」と言った。

「かいつまんで話しただけです。優しいどころか、けっこう意地悪なヤツですよ?小さい頃は魔王だと思ってたくらいですし。」

「…んー、いや、そうじゃなくてな。」

何なんだろう。

「ま、いいや。どうせ姫のことだから、話しただけで今のところはスッキリしてるんだろ?結局お前は限界まで自分でちゃんと考えて結論を出さないと気が済まないヤツだからな。」


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