キミがこの手を取ってくれるなら

「じゅんたー?」
玄関から呼びかけてみるけど、返事がない。
勝手に入るのは、悪い気がしたけど、じゅんたのことは心配だった。

「お邪魔します。」
上がりつつ、中の様子をうかがう。キッチンの横にある扉はお風呂やトイレにつながっているように見えた。部屋は奥の扉か…足を進めて、正面の扉を開いた。


はじめて入る、じゅんたの部屋はカーテンが引かれていたが、光が当たって全体が青白く見えた。

10畳ほどのワンルームの室内は、ブルー系の色でまとめられていて、意外にもきちんと片付けられていた。

奥にあるベッドにじゅんたは眠っていた。
横にある携帯はチカチカと光っていた。
…寝てたから気がつかなかったんだ…

少しだけカーテンを引く。
日に照らされたじゅんたの顔は、部屋の色とは違い、熱が上がっているらしく、真っ赤になっていた。

苦しそうに、時々唸っている。

薬は飲んだのかな?と思い部屋の中を見渡すと、テーブルの上に無造作に置かれている箱のようなものが見えた。近づいて見ると、救急箱のようで、中身が一通り広げてあった。解熱剤の箱の封が切られていて安心する。

ふと、違和感を感じた。自分の家の薬を飲んでるのに、こんなに引っ掻きまわすかな…?


その時、じゅんたが動き、起きた気配がした。
身体を動かすのが辛いのか、壁側を向いたまま「誰か…いるのか?」と言った。

私はそっと近づき、顔をのぞきこむ。
目は閉じられている。はっきりと起きたわけではなさそうだ。苦しそうに顔を歪めながら、ぼんやりとした様子で薄く目を開けたじゅんたは…


「まだ…いたのか?香織。…もう帰って。」

と言って、また目を閉じた。
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