キミがこの手を取ってくれるなら
朝食を食べ終え、私は温かいおしぼりと冷たいおしぼりを交互に目に当てて、せっせと目の腫れを治す作業にいそしんでいた。
それをニヤニヤしながらじっと見ているじゅんたに、
「で、こんなに早くにどうしたの?」
と早くもない時間だけど、聞いてみる。
式は午後からなので、こんな時間に起きても充分に間に合う。
「奈子のこと迎えに来た。」
…それは、知ってるって。約束してたし。
ちょっと呆れたような表情で、「約束の時間には早すぎるよね?車出してくれるのは嬉しいけど、美容院だって11時からだよ?」と言ってみた。
「何だか気が早っちゃってさ。親友の奏の結婚式だぞ。いちばん近くで一緒に祝いたいじゃん。それにさ…」
「奈子、絶対目が腫れてるはずだから、なおすのに時間かかると思ってさー。早めに起こしに来てやったんだよ。」
親友、と聞いてるこっちが恥ずかしくなる言葉をさらりと言って、同じ口でしっかり私を傷つけることも忘れない。
そして、予想通りだよなー、と言って口の端を上げてニヤリと笑った。
じゅんたは、こういうヤツだ。
今も、昔も。
私の物語の天敵。王子と姫を引き裂いた大魔王。