キミがこの手を取ってくれるなら
彼女のこの目付きにはかなり見覚えがある。
奏ちゃんやじゅんたのことが好きだった女の子達に何度となく受けてきた視線と同じ類いのものだった。
「あなたには、関係のないことだと思いますけど。」
慣れているので、黙って聞いているつもりもなかった。私は外見でけっこう大人しいと思われがちなので、こうして言い返すと表立った嫌がらせを受けることはあまりなかった。
しかし、彼女は引き下がらなかった。
「関係あるわ。私純くんと付き合ってたもの。」
それくらいは予想していた。だから?と思っていると彼女は言葉を続けた。
「もう純くんに関わらないで。小山くんに振られたから、次は純くんにしよう、なんて都合のいいこと思ってないでしょうね?」
私は驚いた。小山くん?奏ちゃん?どうしてこの人が奏ちゃんのことを知ってるの?
でも、奏ちゃんも香織さんのことを知ってる様子だったから、面識があったのかもしれない。
……私の知らないところで。
「昔はあなたの存在に嫉妬して純くんとうまく付き合えなかったけど、ずっと後悔していたわ。お互いに嫌いになって別れた訳じゃなかったから……再会した時は運命だと思ったの。」
「私、今までのあなたたちのことを全部聞いたの。『幼なじみ』だからって特別じゃないのよ。好きじゃないならそばにいないで!」