キミがこの手を取ってくれるなら
奏ちゃん達は「Milky Way」にはいなかった。志帆さんの友人のお店に行っている、と陽介さんが教えてくれた。
衝動的にここまで来てしまったけど今日のことはどう話していいか分からなかったので、2人が居なくて内心ほっとしていた。
「じゃあ、そろそろ帰りますね。」
席を立とうとすると、陽介さんが「奈緒子ちゃんそう言えば珍しく自転車だったね。家、近くだったっけ?」と聞いてきた。
「…あれ?奈緒子ちゃん実家だよね?奏一くんの実家の向かいだって言ってなかった?」
「はい。ニュータウンのほうです…」
「はぁ?ニュータウン?!車でも一時間近くかかるだろ?」と驚かれた。
無意識にここまで来たのが自分でも信じられなかったのだ。陽介さんが驚くのも無理はなかった。
「あ、あのっ、駅前のほうに用事があって、そのついでに足を伸ばしただけで…やすみながら来たので、たいした距離じゃないんですっ。」
言い訳めいた言い方になってしまった。
「ごちそうさまでしたっ。また来ますね。」
そのまま陽介さんが何か言いかけようとしたのを遮って外へと飛びだし、逃げるように私は家へと帰った。