キミがこの手を取ってくれるなら
2、魔王との出会い
じゅんたとの出会いは第一印象から最悪だった。
奏ちゃんが卒園し、一年生になってから半月。それまで毎日側にいたのに、なかなか会えなくて、寂しくて。
それでも奏ちゃんは小学校に慣れるまで大変なんだから…とおよそ幼稚園児らしくない思考で見守っていた時。奏ちゃんがお友達を連れて来た。それが、じゅんただった。
「なおちゃん、じゅんくんだよ。」
「こ…こんにちは…」
奏ちゃんの側にまとわりつく女の子達には、がんがん物を言える私だったが、それを抜かすと私はものすごい人見知りだった。
奏ちゃんの後ろに隠れてもじもじしていた私に「なにいってるかわかんない。くらいやつだなー。」と言われたのがじゅんたとの最初の会話だった。
ちなみに、じゅんたの名前は純。最後におまけのようについている「た」は「じゅんくんはたぬきみたいだよね!! → じゅんたぬき」の略で、わたしが命名した。くらいやつ、に腹を立ててそう叫んで以来、私だけがずっとじゅんた、と呼び続けている。
今は痩せてすらっとしているじゅんただけど、昔は丸々と太っていて、丈の短めのTシャツを着た時なんかは、お腹がぽこん、と飛び出していた。その姿がまるでたぬきみたいに見えたのだ。
身長も声も大きく、典型的なガキ大将タイプ。
そんなじゅんたに2歳も年下のガリガリのチビ女が敵うわけもなく…それでもちょこまかと奏ちゃんの側にいる私が、じゅんたに手下のように扱われるのも当然の流れだった。