キミがこの手を取ってくれるなら
婚約してからというもの、奏ちゃんは志帆さんとの関係をオープンにした。奏ちゃん目当てで通いつめていた女の子たちはかなりがっかりしたんじゃないだろうか。
集客が落ちる…かと思いきや、2代目ウェイターの木村くんがその辺を支えているらしい。
奏ちゃんとタイプの違うワンコ系男子を雇った陽介さんは、なかなかのやり手だと思う。
「奈緒、今日は俺の話をしに来たんじゃないだろ。」と奏ちゃんが言う。
そうだった…私は香織さんの話を聞きにきたんだった。
そして、奏ちゃんは私が想像していたのとちょっと違う話を始めた。
***
じゅんたと香織さん、2人の出会いは高校1年生の時。彼女は同じ学校の同級生だったのだ。
「で、崎山は紫とも友達。だから奈緒のことも知ってたんじゃないかな。」
そっか。そうだったんだ。
聞いてしまえば、何てことのない話だった。私たち3人のことだって、紫ちゃんや、同じ中学からの同級生に聞き回れば分かるし、私が奏ちゃんを好きだってことまでアッサリと分かるだろう。