キミがこの手を取ってくれるなら
「だから、奏ちゃん私たちのこと遊びにおいで、って誘ってくれたんだね。」
あの秋の日、奏ちゃんが声をかけてくれなかったら、きっと私たち3人はバラバラになってしまっていたと思う。
あの時はただ苦しくて、何で今日なんだろうと思っていたけど…
あの日、傷ついていた心を2人の温かい愛情で満たしてもらった。だから、それからの学校生活にも耐えられた。私は一人じゃないって。2人の『幼なじみ』がいるからって思えたから。そんな関係に戻れたのは、奏ちゃんの優しさがあったからだったんだ…
「後悔なんてしないで。私はあの日、2人に救われたんだから。」心からの感謝を込めて、私はにっこりと笑った。
そう言っても、奏ちゃんの表情は固いままだった。そして言いにくそうに口を開いた。
「でもな、奈緒…今も同じことで悩んでないか?」
「えっ?」
「北原さんから奈緒の様子を聞いた時思ったんだ。奈緒は一人になることや、よりかかる所を無くすことが怖いんじゃないのか?って…」
ートラウマー
不意に、そんな言葉が頭に浮かんだ。