キミがこの手を取ってくれるなら
だんだんと、ぼやけていた自分の気持ちがはっきりとしてきたような気がした。
最初に3人でいることを諦めたのは私だった。
奏ちゃんに彼女ができて、私は幼い頃のように奏ちゃんと一緒にいられないことを知った。
学力がないことを言い訳にして、違う高校に進学して追いかけることをやめた。
あの時点で、道は確実に別れていたのに、私は知らないふりをした。
奏ちゃんが彼女と別れてじゅんたの「報告」がなくなった。1人になったとようやく気づいた私は、ひどく不安定になっていた。誰かに支えてほしくて、好きでもない人と付き合って…
あの秋の日、友達を失った。
2人と『幼なじみ』に戻れたことは嬉しかったけど、あの日に感じた1人になる恐怖はずっと心の中に染み付いたままだった。
私が仕事に対して前向きでがつがつ取り組むのは、志帆さんみたいになりたいと思ったのがきっかけだった。
凛として、自分の目標をしっかりと持っていて、周りにも仕事ぶりを認められている女性。
奏ちゃんは共に人生を歩いていこうと決めて彼女の手を取った。そんな人になりたいと思った。
…私も奏ちゃんに手を取って欲しかったから。