キミがこの手を取ってくれるなら
「あはは…悩んでたことに、今気がついたよ。奏ちゃんは私のことよく分かってるね」
無理やり明るい感じで言葉を返してみた。
私は自分のことを全然分かってなかったよ、と力なく笑った私に、奏ちゃんは諭すように言った。
「なあ、奈緒。周りをよく見て。ほんとうに、奈緒はひとり?恋人じゃないと、寄りかかったり、甘えたりはできない?違うよな。奈緒はいっつも1人で思い込んで、突っ走るくせに、人一倍悩んでる。もう少し、他の人に歩み寄りなよ。もちろん俺にも、な。」
前に北原さんに幼なじみなんだから、お前の性格は分かってるだろ、って言われたのを思い出した。北原さんはじゅんたのことを言ってたけど、奏ちゃんも私のことをよく見て知っててくれたんだな、と意外に思う。
「だから、もうちょっと思ってること、考えたことを話してごらん。奈緒は言葉が足りないから、いつも誤解されるし、余計に傷ついてる。そんな奈緒を、みんな心配してるんだよ。」
「奏ちゃん…私、思ったこと……話、してもいいのかな?みんな…離れていかない?」
今まで築いてきたものが、一瞬で無くなるあの感覚。恐怖。またあの頃に戻るのが、怖い。
「それで離れていく人はそれまで、ってこと。割りきる勇気も必要だし、大切だと思う人にはきちんと話して気持ちを伝えて繋ぎ止める努力も必要だと思うよ。」
それができたら、この堂々巡りの不安から抜け出せるのかな…