キミがこの手を取ってくれるなら
今まで奏ちゃんと2人だけだった私の世界にじゅんたが入ってきたことで、王子とお姫様だけのしあわせな物語は終わりを迎えてしまった。
遊ぶときも3人で。が当たり前になった頃、奏ちゃんと仲良くなりたそうな女の子達や、じゅんたが仲良くなった男の子達ともだんだん遊ぶようになっていった。3人が4人になり、5人になり、6人になり…
夏休みに入る頃には、集団で遊ぶようになっていた。
奏ちゃん一筋で他に友達がいなかった私も当然そのグループに入って遊んでたんだけど、私はその中では、いつもじゅんたの手下だった。
鬼ごっこではいつも真っ先につかまり、花火をしたときも花火を持ったままのじゅんたに、さんざん追いかけ回された。
雪合戦では、じゅんたに引っ張られるまま無理やり同じチームにさせられ、ただひたすらじゅんたが投げる雪だまを作らされた。
風邪を引いて寝込んでいた時なんて、心細くて奏ちゃんの名前を呼ぶ私の横で、じゅんたは「奏は、今日お母さんと出掛けてていなかったぞー。」「真っ赤でかわいそー。」なんて口では言いながらも、全く心配する様子もなくお菓子を食べながら漫画を読んでいた。
…今思い出してもむかついてくる。
最低の思い出ばかりだ。
でも、どんなにじゅんたにひどい扱いを受けても奏ちゃんの近くにいられるだけで私は満足していた。じゅんたにいじめられた後に心配してくれるのも、実は嬉しかった。
だからそれでもいいやとその頃の私は思っていた。