キミがこの手を取ってくれるなら
「奈子の髪は短いままなんだな…」
じゅんたの手が私の髪に触れた。
彼が伸ばして欲しいと言った髪はショートのままだ。どうしても伸ばす気になれなかった。
「気持ちは…まだリセットしたままか?」
とじゅんたは私の目をじっと見ながら言った。
「…どうしても、伸ばせないの。もう奏ちゃんを好きな気持ちに区切りがついたと思ってた。でもね、1人になるのが怖くて先に進めないの。」
「香織さんに言われるまで、気づかなかった。私、じゅんたに甘えっぱなしで…弱かった。香織さんに責められても仕方ないの。」
いつも2人に甘え続けた自分を嫌いになりそうだった。弱い人間にはなりたくなかった。
じゅんたまで失ったら、私は1人で立てなくなってしまう。そんな身勝手な気持ちだけで、じゅんたの気持ちを知りながら、私は気づかないふりをしてきた。
…私はずるい。
「奈子、大丈夫か?顔色が悪い。」
じゅんたが心配そうに声をかける。
「大丈夫」と、そう言いかけて…
「……大丈夫…じゃない。」
思わず、そう口にしていた。
「私…わたし…ひとりになっちゃ…う…」
「…こんな私のこと…じゅんた…だって…」
呆れて嫌いになっちゃうでしょ?
…と言いたかったけど、後は涙が溢れてきて言葉にならなかった。
そのまま、私はこどものように、 わあわあと声をあげながら泣いた。