今、ここであなたに誓わせて
「りんプリンだって」
そうやって促すと、同僚の手からそのプリンをもらって小さな頭をこてんと下げた。
「ありがとう」
「りんちゃん偉いねー、ちゃんとお礼言えるんだねー」
そうやって褒められると照れているのか上目遣いでちらっと同僚の顔を見て顔を赤くする。分かりやすい位に嬉しそうなりん、やっと正面を向いてプリンを開けようとしたところだったがその手を止める。
「りんプリンはお昼ご飯食べてからね」
悲しそうな顔をするりんに、前の席で同じような顔をする同僚達の顔がおかしくて思わず笑ってしまう。
「ごめんな、俺がご飯前に出したもんだから」
「いやいや、ありがとう」
床に着かない短い足をぶらんぶら揺らせ、プリキューティーの弁当の包みを解きながら俺の顔を見上げて尋ねる。
「きょうはトトロさん?」
「今日はキティちゃん」
「きてぃちゃんっ!?」
初めてのキャラに興奮したりんの大きな声が休憩室に響き渡る。慌てて、しーっ!と小さな口に人差し指を持っていく。お弁当箱を開けると、対面したご飯とノリでできたキティちゃんにまた大きな声を出す。
「わぁーっ、きてぃちゃんっ!」
「りん静かに、皆休憩中だからっ」
「きてぃちゃん、かわいーっ」
これはダメだと思って部屋から連れ出そうとすると後ろから先輩の声が、
「構わねぇよ」
「いやでも……」
「せっかくこんなに喜んでんのに水差してやんな」
「すいません、ありがとうございます」
「りんちゃん、キティちゃん良かったね」
「うんっ」
ニコニコしながらキティちゃんを残して周りのおかずから食べていくりん。その様子に皆が微笑ましそうに見つめる。
「可愛いなぁ、子供欲しくなるよな」
「あはは、まず結婚する相手いないけどな」
最初は俺の後ろに隠れておっかなびっくりしていたがこうやってどんどん職場に馴染んでいった。
6畳半の小さな部屋で行き詰っていた、閉鎖された世界がこうやって開けていく。根っからの悪い人なんていないんだ、こんなに人は優しいものなんだと思えた。