今、ここであなたに誓わせて

週に一回の仕事の休みの日も教習所に一日縛られることとなったが、夜は久しぶりに社長宅へ立ち寄ることができた。久しぶりに会ったりんは俺の姿を見つけると笑顔で駆け寄って来た。

「おにいちゃん、めんきょとれたのっ?」
「ごめんね、まだだよ。でももう少しだから」

その後から、おばさんもやって来た。台所からはカレーの良い香りがする。

「今日は夕ご飯食べて行けるでしょ?」
「はい、いつも本当にありがとうございます」
「大丈夫?少しやつれたんじゃない?ちゃんと眠れてる?プログラムもっとゆるくしてもらったら?」
「いやこれ以上りんの世話を見てもらうのは申し訳ないので。なるべく最短で取りたいんです」
「うちは気遣わなくてていいのよ」
「そういう訳にはいかないです。本当いつもお世話になりっぱなしで……」

頭を下げる俺に、おばさんも申し訳なさそうに下を向いている。何か言いにくそうな様子にどうしたのかおばさんの言葉を待つ。

「篤司君、あの、実はりんちゃんの髪が……」

そう言われりんの髪を見ると、うっすら薄い部分があり柔らかい髪をかき分けた。すると500円硬貨程の頭皮が露わになった。

「……どうした、これっ?」
「ん?」

慌てた俺の声にりんが大きな目で見上げる。

「円形脱毛症みたいなの、多分篤司君と離れたのがストレスだったみたいで。ごめんなさい、早く連絡しなきゃと思ったんだけど」

申し訳なさそうに言うおばさんに俺は頭を振って否定する。決しておばさんのせいではない、だけどこんな風にしてしまったのは俺のせいかと思うとやるせなさが込みあげてくる。りんは決して寂しさに慣れたんじゃない、我慢を覚えただけだったのだ。そのストレスがこうやって体に影響している。

「ここだけつるつるなの」
「ごめんな、女の子なのにな」

そこに高校生になった亜弓ちゃんが、よそってきたカレーをテーブルの上に置いていく。

「このまま試験が落ち着くまでは預かるつもりでいるけど」
「いや……」

おばさんの本当に有り難い申し出。だけど、あともう少しというところだったが、これ以上りんに寂しい思いをさせる訳にはいかない。今日にでも連れて帰ろうとした矢先、亜弓ちゃんがりんに声をかけた。

「篤司さん頑張ってるからりんちゃんも頑張ったんだよね?私の頑張りを無駄にしないでって言ってやりな」
「むだにしないでっ」

よく意味も分からず、亜弓ちゃんに言われるがまま復唱するりん。

「大丈夫、頑張れるよね。女の子もね強くないとダメなの、ほらプリキューティーでも言ってたでしょ」
「だいじょうぶ、りんつよい子だから。プリキューティーもそう言ってるから」

ファイティングポーズを取る亜弓ちゃんに真似してりんも両拳を顔面で構える。

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