今、ここであなたに誓わせて
しかし悪いことは続くもので、ここにきて本当に運の悪いことに母方の叔父さんと叔母さんが会いに来るというのだ。年に数回こうしてりんと俺の様子を伺いに来るのだが、今回はさすがにタイミング悪い。試験が重なって忙しいと言い訳だてたが顔を見たらすぐ帰ると言って、半ば強引に俺が休みの日曜日にやって来た。午前中は教習所で座学が入っていたが、今日ばかりは仕方がない。
久しぶりにりんを自分の家に連れ帰り、朝からお茶菓子を用意して二人を待った。
「久しぶりね、りんちゃん。元気そうで安心したわ」
「りんげんきだよ」
そう言って買ってきてもらったパックのオレンジジュースをじゅーっと啜る。
「お二人もお元気そうで……」
「大丈夫?何か困ってることはない?」
「はい社長のお宅で大分世話になっていて」
りんが叔父さんの光る頭をじーっと見つめ、嫌な予感がしたがついに口に出してしまった。
「おじちゃん、あたまつるつるだね」
「そうなんだよ、年々薄くなっちゃって」
そう言って頭を擦る叔父さんに、俺はすいませんと頭を下げると、叔父さんはいやいやと顔の前で手を振った。しかしそれだけには言いとどまらず、自分の髪をかき分けわざわざハゲてるところを見せつけ、
「りんもだよー」
と、言ってのけた。
「りんっ」
すぐさまその手を離させ隠したが、時すでに遅し。二人とも眉をひそめている。
「どうしたの?それ」
「りんもつるつるなの」
「どうしてつるつるになっちゃったの?」
ん?と首をかしげるりんに、今度は俺に尋ねてきた。
「篤司君、これはどうしたの?」
「えっと、すいません。俺が職場の試験やら運転免許やらがあって、りんを社長のお宅に預かってもらっていたんですけど。それがストレスになったのか」
「やっぱり仕事しながらなんて難しかったのよ。やっぱりもう少し大きくなるまでうちで預かった方がいいんじゃないかしら?厄介になっているその社長さんの御家族にも申し訳ないし」
「でもそうなりますと、俺も会いづらくなりますし」
「何もずっとという訳じゃないわ。小さい頃だけでも、篤司君も仕事に専念したいでしょ」
良心から言ってくれているのは分かるが、今ここで叔母さんちにりんを預けてしまっては更にりんにストレスをかけてしまう。
「お兄ちゃんとちょっと離れるけど、知らないお家にいるよりはいいわよね?」
「どれくらい、はなれるの?」
「おばちゃんちはね、隣町にあるの」
「いまより、もっと会えなくなるの?」